全日本チェンソーアート協会

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海外遠征日記

リッジウェイ ランデヴューズ体験記2003

0201.12.10更新


チェーンソーカーバーが世界各国から集まる最大のランデビューズがリッジウェイで行われた。

アメリカ、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ニュージーランド、スコットランド、イングランド、スウェーデン、そして日本から14人、総勢176人ものカーバーが集まりカービングを行うものだ。

このランデビューズはリッジウェイ在住のチェーンソーカーバー、リック・ボニー氏らが中心に重度障害児救済のチャリティーとして始められたものであり、出来た作品をオークションにかけてその売上金を全て救済金とする。 会場運営はリッジウェイの皆さんのボランティアとスポンサーによってまかなわれている。

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カービングは競技ではないので時間規制、使用工具規制などは無く、ペイント、バーニングなども自由だ。 使用するログは自由に選べるので作品もいくつ作ってもかまわない。 素晴らしい作品を作りオークションで高値で落札されるものを作る事がカーバーに与えられた義務である。

アメリカ国内から来るカーバーはトレーラーに作品を満載してやってくる。

出場費用は全て自己負担なので資金捻出のために持参した作品は個々に販売してかまわないのだ。 作品は繊細で美しい光沢の仕上げを施されたものから3m以上ある巨大な物までバラエティーに富み全てが感激を与えてくれる。

私が体験したリッジウェイ・ランデブーの4日間を皆さんにお伝えしよう。 私たちは2003年2月26日USA ペンシルバニア州リッジウェイに向けて出発する。メンバーは東栄町チェーンソーアートクラブの伊藤会長をはじめとする12名だ。

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成田をPM5時55分に出発し同日PM2時15分にシカゴ空港に着き、そのまま乗り継ぎピッツバーグ空港にPM6時41分に着く。空港近隣のコンフォード・インに宿泊し翌朝8時リッジウェイに向けチャーターバスで出発。昼前にリッジウェイ・ランデビューズに到着する。

会場入り口には各国の国旗の中に日本の国旗がたなびいているのにまず感激する。ゲート正面にマスターオブチェーンソーの看板が掲げられていた。そしてブライアン・ルース氏と城所夫妻が出迎えてくれた。 ブライアン・ルース氏は日本の東栄町チェーンソーアートクラブのメイン講師であり、チェーンソーアート世界選手権で4年連続チャンピオンを獲得した、まさにマスター・オブ・チェーンソーだ。

城所氏は日本のプロチェーンソーカーバーの第一人者でありUSAにおいても活躍されており今回もすでにひと月ほど前にUSA入りして各地でチェーンソーカービングを行って来ている。もちろん奥様の栄子さんもカーバーとしていつもいっしょに頑張っている。羨ましい限りだ。

私たちは、荷物をブライアン氏のトラックに積み込んだ。ブライアン氏のトラックは後部両サイドが開き中に工具やチェーンソーを収納できる様になっている。またまた感激する。

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ファイアー・ホールで参加者達に用意されたランチを食べ終えると、ギフトショップで受付を済ませ、早々にカービング用のログの選定をはじめた。

もうすでにセッティングを終えたカーバーはカービングをはじめている。 会場脇に山積みされたログの中から太田さんと二人で選んだ1本を二つに切り分けボブキャットで私たちのブースまで運んでもらった。

ボブキャットとはフォークリフトのようなものだが左右のタイヤが逆転するので小回りが効きコンパクトなのにタイヤは大きめでログの運搬には最適だ。 私も一台欲しくなってしまった。

選んだログは最初太いと思ったのだがブースで立てて見たら、皆に比べて細く迫力負けしていたので、もう一度二人で太いログを選びなおした。 しかし残っていた太いログはダメージや節も多く作品の仕上がりが気になるものだった。悩んだがやはりでかいログで作ることにした。

2日目みんながオーダーしていたチェーンソーをブライアン氏が持って来た。 私は家ではほとんどハスクバーナースを使用しているのだが今回はスチールの260とエコー3450カービングソーをオーダーしておいた。

エコー3450はノーマル購入した方が安いとブライアン氏からアドバイスがあったので、みんなノーマルタイプを購入して夜スプロケット交換をする事にしていた。 ノーマルタイプは3/8ピッチなのでカービングに適した1/4ピッチにするためだ。カービングバーはバーノーズが細いのでピッチは細かい方が回転が滑らかでよいのである。

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私はラフカットに使うスチール260を組み立て始めたが、本体スプロケットとバーが325ピッチなのにソーチェーンは3/8で噛み合わなかった。 ブライアン氏に言うと「明日チェンジする。」と言って申しわけなさそうだった。

日本のようにセット販売されているものとは違いそれぞれ違うパーツのものを20台以上オーダーして大変な思いをさせているのだ。明日交換できるのならノープロブレムである。 夕方5時頃になるとかなり冷え込んできた。 カーバー達の集会を終えると宿泊場所へ向かった。

宿泊場所は会場から30分ほど山奥に入った所にあるハンティング用キャビンだ。 入ると中は大変暖かい。驚いたことに留守中でも暖房はつけっぱなしにしているようだ。 宿泊はブライアン氏と奥様のジェーンさんに息子のザック君も一緒だ。 今回のランデビューにおける私たち工具の手配、車の手配、宿の手配、 ブースの準備と全ての面倒はブライアン氏と奥様のジェーンさんによってなされたものだ。本当に感謝している。

エコー3450のスプロケットを交換し終えるとリッジウェイの一日目が終了した。

2日目

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2日目はまずはアイスカービングだ。メインストリートにあるコートハウスの広場が会場になる。

チェーンソーは昨晩セッティングしたエコー3450を使用する。氷は均一なのでとてもカットしやすい。透き通っているので差し込んでもバーが何処まで入っているか分かるのは良いが、凹凸感がはっきりしないので細かなディティールは表現しにくい。 気温が低いから濡れないだろうと思っていたらとんでもなかった。

手袋は骨折した左小指の保護用金属板のため入らないので、持参した軍手の小指を切って使った。軍手は濡れ、剥き出しの小指は金属板が冷えることによって痛さから無感覚へとなった。ウェアーもかなり濡れた。 せっかく持って行ったレインウェアーはやはり着るべきだった。

午前中にアイスカービングを終えて午後は昨日ラフカットをおおかた済ませたウッドカービングの続きをはじめた。

最初はチェーンをセットした260の試し切りから行った。372から比べるとかなり切れ味が落ちる。260は49cc、372は72cc。23ccの差があるのだから仕方ない事だが、パワーと回転数に対してバーが太いような気がする。 260はあまり使わずにエコー3450に替える。 コンパクトで良いのだがアイスカービングの時から思うとかなり振動を感じる。

疲れもあるのだろう。少し休む事にした。

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世界のカーバーの作品を見て回る。どれもすごい。写真やビデオで見ただけでは感じる事の出来ないものがある。

完璧なまでにリアルなもの。素材の形をうまく生かしたもの。荒い仕上げながらも巧みにチェーンソーの味わいを表現しているもの。躍動感のあるもの。デフォルメの素晴らしいもの。どれも甲乙付けられるものではない。 一日中見ていても見切れないものだがそうもしていられない。

太田さんは隣で鳳凰を完成させていた。私も今日中に仕上げようと頑張った。 今日もカーバー全員で交流を深めながら夕食を済ませキャビンへ帰る。

3日目

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2月26日~3月6日の間、リッジウェイカービング大会体験記4日目3日目は7時会場入りなので6時起きだった。

朝食は食べずに出かける。昨日鈴子さんのご主人の友人である日比野さんが家族で見学に来てくれた。日比野さんは車の部品の仕事で10ヶ月ほど前にUSAに出張して来ているとの事だ。 キャビンに一緒に泊まったので奥様が後から会場におにぎりを届けてくれると言うのだ。ありがたいことだ。

昨日私は「チェーンソーマン」を作り終えたので、今日は最初に選んだ小ぶりのログにイーグルを彫る事にした。 ただイーグルは羽の表現を細かくしなければいけないのだが、左手がしっかり握れないので翼のディティールをうまく表現出来るか気がかりだった。

ラフカットを手早く終えたかったので太田さんにまた372を借りた。 排気量のわりに振動が少なく本当に良い。 260はほとんど使わずに脇で切り屑に埋もれている。 ちょっとかわいそうな気がした。

家に持ち帰ったらバーを替えて杉をたっぷり削らしてやろう。 3450カービングソーに替えて細部を彫り始める。

羽の細部を彫り続けていると3450の振動が手に影響を与え出す。 3450はカービング用としてたくさん使われているようだが、細かな作業を続けて行うものとしては防振性がかなり低い。

昨日軍手が濡れてしまったので今日は素手で使っているのでなおさら感じる。

こちらでは漢字を彫ってあると受けるそうだ。五郎さんや太田さんは脇に自分の名前を彫っている。私も彫る事にした。正面に大きく、しかも浮き彫りで彫った。昨日のチェーンソーマンには「栗田」、今日は「宏武」と彫ろう。

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これを購入した人が家の前に置いてあるのを日本人が見たら栗田さんが住んでいるのかと思うかな・・・などと考えて彫っていたら「武」の点を彫り忘れてしまった。気がついたのはボブキャットに乗せて運ばれる時だった。 オークションは12mトレーラーを2台並べた上で行われる。前後2列に並べられたがとても収まらず、前のにもう2列置かれた。

その風景は圧巻である。

雨が大分降り出して来たが会場は人で埋め尽くされている。 200個近くの作品が競り落とされていく。売れ残ったものは一つもなかった。 夜はパーティーが行われた。最後の夜とあって大変盛り上がった。特にジェーンさん、栄子さん、鈴子さんの着物姿は会場を盛り上げた。

4日目(最終日)

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4日目。最終日である。 午前中ファイアーホールで結果報告、抽選発表、カーバーズギルドの集会などを朝食を頂きながら行った。

外の会場跡では切り屑の山が点在する中をボブキャットが、こまめに動き回っている。ボランティアの人たちが片付けてくれているのだ。ブースのテントは昨日皆で撤去したが、切り屑の山を見るとすまない気がした。

午後はチョット買い物に出かける。自然暮らしの会のメンバーなら誰でも同じだと思うが見るものはやはり工具売り場だ。そしてつい重いハンマーを3本も買ってしまった。

帰りがけにリック氏の家に寄ると、誰もいないがオープン状態だ。留守番犬のぺビーが愛想良く出迎えてくれる。開催前は事務所の代わりのようなもので、誰もが自由に出入りしていたらしい。 キャビンに着く頃にはすっかり暗くなってしまった。ドアーを開けると中はカーバー達でいっぱいになっている。

最後のパーティーにたこ焼きをご馳走する事にしていたのだ。 私がこの様に世界のカーバー達と交流を持てたことはブライアン氏、リック氏と東栄町チェーンソーアートクラブの皆様が素晴らしい信頼関係を築いていたからである。本当に感謝する。

それから今回ボランティアで通訳をして頂いたの百合子さんと、 会場にパンまで焼いて持って来てくれたナチコさんにも感謝の気持ちでいっぱいだ。 リッジウェイに日本人が二人も在住している事はこれからも大変心強い。 今回カービングの世界を知ろうと好奇心で参加したのだが、人と人との交流の大切さを痛感させられたツアーだった。 他にも感動の連続だった。

朝キッチンの窓から外を見ていた栄子さんが「カーディナルがいる。」と言った。 かけより窓越しに外を見ると白い雪の中に真っ赤なカーディナルが見えた。 願い事を叶えてくれる鳥だそうだ。脇にはブルージェイもいた。 写真は撮れなかったが瞼にしっかり焼き付けた。

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5日目はリッジウェイで一番の快晴だった。 朝の気温も一番低いようだ。 使ったチェーンソーを郵送するために外に出て分解掃除をしていると10分もしないうちに手が感じなくなる。燃料とチェーンオイルをすっかり抜き取りバーをはずして一つの箱に2台を詰め込む。これでOKだ。 朝食は鈴子さん特性のカレーを食べて出荷に向かう。

私はジェーンさんの運転する車に同乗していた。道が左にカーブし出した時、ジェーンさんが「イーグル」と言って車を止めた。窓越しに見ると雑木の木立の上を鷲が旋回している。

最初は頭と尾が白くわかる程大きかったが見る見るうちに空高く上昇していった。ジェーンさんもはじめて見たそうだ。そんな白頭鷲を見られるなんてなんとラッキーなのだろう。

荷物は最初宅配便で送ろうとしてお店に持ち込んだのだが大きさと重量を測り送料を調べてもらったら郵送の方が安いらしい。 もう一度トラックに積み込み郵便局に向かった。 太田さんの荷物は大きすぎるので2個に分けたほうが安いと言われたので局のホールで詰めなおし作業だ。

手続きを終えるのに昼過ぎまでかかった。 それでもブライアン氏が傍で全て手続きをしてくれたから終えられたのだ。 リッジウェイ最後の朝は雪が降っていて窓から覗くと車は白く覆われていた。

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キャビンは道路から50Mほど小道を下った所にある。路面は凍っている上に積雪もある。4台の車のうち4WDはトラック一台のみだ。東京ならチェーンを着けなければ絶対上がらないと思うところだが、ブライアン氏のドライビングテクニックで2WD車を牽引せずに上まで上げた。

町へつく頃には雪も止み路面の雪も溶けだしていた。 レストランで朝食を済ませるとファイアーホールへと向かった。

来た時と同じ黒塗りのバスが迎えに来ていた。百合子さんは息子さんと見送りに来てくれた。

ジェーンは目を赤くしている。ザックも寂しそうだ。6日間という短い期間だが一年にも相当する充実感があった。来て本当に良かった。 ブライアント握手を交わしながらまた来年も必ず来ようと思った。

リッジウェイの皆様お世話になりました。

リック、ブライアン、ジェーン、ザックお世話になりました。百合子さん、ナチコさんお世話になりました。 伊藤会長をはじめ、城所夫妻、五郎さん、永原さん、内藤さん、玲さん、菅沼さん、 太田さん、小野沢さん、荒井君、鈴子さん、山口さん、お世話になりました。

(記事:栗田 宏武)


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